アフリカ大陸のとある場所に、文明と隔絶された小さな村があった。彼らは狩猟民族でガゼルやバッファローを捕らえては生活していた。


男達は狩りを行う為に一日に平均して4時間働いていた。女達は料理等の雑務をする為に毎日だいたい3時間程度働いていた。

村の男達は獲物が見つからない時には10時間程度働く事もあった。しかし翌日には決まって休みを取り、仲間たちと決まって村の美しい娘の話をするのだった。村の生活は楽だった。男達は娘とデートを重ね、毎日ダンスを踊り、歌を歌う。


しかし、時として厳しい時期もあった。狩りをする為に動物を探しても見つからない時があるのだ。そんな時には、決まってドングリの実を食べて厳しい時期を乗り越えてきたのである。しかし困った事に今年は厳しい乾季が続いたおかげでドングリを集める事にも苦労した。

みんなお腹が空いてひもじい思いをした。狩りもできず、ドングリも少ない。ついに餓死者まで出てきた。






村の長老は呟いた









そんなある日、村一番の賢い青年に一つのアイデアが閃いた。








村の長老は呟いた








しかし、ひもじい思いをした村人達は、長老の言葉を無視して青年のアイデアを支持した。かくして村にはドングリが蓄えられる事になった。男たちは今まで4時間働いていたのをドングリの採取の為に1時間だけ増やし、5時間働くようになった。





そしてある日、今までにない厳しい乾季がやってきた。動物は死に絶え、植物はみんな枯れてしまった。どんぐりも採取する事はできなくなっていた。

しかし、今までに貯蓄したドングリのおかげで村の皆は厳しい時期を乗り越える事ができた。どんぐりがなければ村人の半分は命を落としていた事だろう。



村人は青年を称えた。






いい加減な事を言って、皆の命を危険にさらした長老は青年と村人達によって追放された。




かくしてドングリを集める事が好ましい空気が作られた。たくさんドングリを集める事が村で認められる条件となった。男達や女達は来る日も来る日もドングリを集める事に専念しだした。


今までは長老にたくさん動物を狩りをしても、腐ってしまうので無駄に生き物を殺してはならないと怒られていた。しかし今ではその長老は追放され、おまけにドングリは腐らないのだ。

動物は保存が利かないから駄目だ。しかし、どんぐりは保存が利くからたくさん採れるだけ取ったほうがいいという風に村人たちは思った。


そして男達は、狩猟を行いながら女達に認められる為にドングリをいかにたくさん集められるかを競争し始めた。女達もそれに負けじとドングリを貯蓄した。


ドングリをあまり集めてこない男性は、女性に軽視された。ドングリをあまり集めてこない女性は、女性同士に軽視された。



かくして、壮絶などんぐり収集競争が繰り広げられるようになった。

かつては、一日に4時間働く男達は、今では4時間狩猟を行い12時間ドングリを収集するようになった。合計で一日に16時間働くようになった。

女達は3時間家事を行い、12時間ドングリを集めるようになった。かくして15時間働くようになった。



ドングリは蓄えられ、天高く積まれるほどになった。そして村から陽気な歌声とダンスは消え去った。村人はとにかくドングリを集める事に必死になっていた。





そんなある日の出来事だった。村人の一人がドングリを集める最中に倒れて死んだ。原因はドングリの集めすぎによる過労死だった。

村人は驚愕した。

しかし被害はそれだけに留まらなかった。ドングリを狂ったように集め始めて30年が経っていた。みんな人生の大半が終っていた。ダンスと歌はかれこれ20年以上ご無沙汰だった。村では誰が悪いのかをめぐって喧嘩が起きた。ドングリを蓄える事を考えたかつての青年は、責任を取らされ村から追放された。

しかし村人が一度身につけたがんばり癖はなかなか直らなかった。村人は来る日も来る日もドングリを集め続けた。

村人の口癖はこうだった。




そして村人は来る日も来る日もドングリを集め続けた。










その一部始終を見た村の子供達は、こう心に誓った。