話半分に読んでもらいたい。

元ネタは「 分裂勘違い君劇場 」 の 「 西暦2026年の日本 」 である。





西暦20XX年の日本。

高度に発達した資本主義社会。世界は小規模の紛争やテロに見舞われたものの、大規模な戦争もなく100年近くの平和を謳歌していた。


グローバル経済の名の下に、世界各国に工場が作られた。世界で最も安い場所で即座に商品を生産する時代が訪れた。


20xx年にしてようやく神の見えざる手が完璧に動く時が訪れたように見えた。高度な情報化社会により世界中の歪は一瞬にして裁定(解消)される社会が訪れたのである。



しかし思ったより各国の貿易は進まなかった。各国の貿易統計を見ると輸入・輸出に占める割合は過去100年と比べて大差なかった。



世界の工場中国やベトナムやロシアの格安の商品が、先進国にデフレをもたらすという話も出鱈目だったようだ。少なくとも過去何十年の統計資料を見ても、世界中でデフレは起こっていなかった。




しかし、20xx年の日本に住むバリュー消費家は疑問に思った。




「驚くほど商品が安くなっている。50年前と比べて信じられないほど安くなっている。何故デフレじゃないんだ!?」




彼の馴染みの衣服店、食料品店、ホームセンター、どこもかしくも恐ろしいほどの低価格が進んでいる。そしてそれらのお店には、中国製品もベトナム製品もロシア製品もあまり見かけなかった。











そこで好奇心旺盛な彼は、業界の物知りで有名なホームセンターの店長に聞いてみる事にした。

「なぜ海外製品が少ないのですか?」





博学なホームセンターの店長は答えた。

「各企業が血眼になって海外の製品に対抗する為に、限界までコストカットをしているんです」

「合理化につぐ合理化と、生産革命、企業の驚くほどの低利益、各企業の生き残りをかけた過剰投資、過剰競争、これらが組み合わさって当店で衝撃のプライスになっているのです」

「企業がちょっとでも値上げしようものなら、すぐさま海外から格安の商品が入ってきてしまいますので、どこの企業も値上げをしようとはしませんね。熾烈な過当競争のおかげで海外製品をわざわざ輸入する必要はないんですよ」




「なるほど。海外製品はほとんど輸入されていない。しかし格安な海外製品の価格が日本製品に影響を与えているわけか。熾烈な価格競争でわざわざ輸送コストをかけてまで輸入する必要もないわけか」


「だから貿易統計には表れないが、私の身の回りの商品はとてつもないほど安くなっていたわけか・・・・」


「しかし疑問は解消されていない。何故物価はデフレ傾向じゃないのかな?」


「何でもかんでも恐ろしいほど安くなっているのに」


「それにここ数十年、僕の生活はとんでもない程豊かになった。物は安くなる一方で所得は変らない。デフレじゃないのか・・・・経済って難しいなぁ・・・・」














ある時、バリュー消費家は普段足を踏み入れない高級ブランドショップに足を運んだ。そこで彼は腰を抜かした。噂には聴いていたがまさか本当だとは思わなかった。


なんとそこには、数十万円〜数百万円、そして時には数千万円のバッグや靴やら服が溢れていた。



彼は生産革命や企業競争、合理化、グローバル競争により価格は安くなるものだと思っていた。しかし様子は違った。彼の知る限り過去数十年前よりも高級ブランドの商品は激しく値上がりしていた。



「グローバル競争社会はどこにいったんだ?」


そこで彼は閃いた。


「なるほど!競争に巻き込まれるコモディティは値下がりしたが、虚業の極みと差別化に成功した商品は競争に巻き込まれない」


「だから値下げによってコモディティに流れるお金が減った分、ブランド品に流れるお金が増えたのか!」


「だからブランド品が値上がりして、コモディティは値下がりして、物価は均衡を保っていたのか!」





西暦20XX年の日本。


彼は以前と生活水準が変らない事に苛立っていた。経済成長はどうなってしまったのだ。日本はこれから先もずっと豊かになっていくのではなかったのか。経営知識、合理化、科学技術、医学、様々な技術は進化した。


しかし肝心の生活水準は大して代わり映えがしなかった。それどころか、彼が欲しがる物はどんどん値上がりした。手に入れられるのは退屈なありきたりな商品だけ。そういったものだけがどんどん安くなっていった。

欲しいものはどんどん遠ざかり、以前よりも貧しくなったのではないかと思うようになった。最新のコンピューターは手の届かない価格だった。




欲しい物には手が届かない!


どんどん値上がりしていって、貧しくなっていく。





彼がコンピューターを買えるのは、最新コンピューターが発売されてから1年後だった。こんな古臭いものはいらないと思いつつも惨めな気持ちでコンピューターを操作した。



流行の品物を手に入れようとすると、決まって給料はスッカラカンになるのだった。彼は欲しいものを買う為に転職して努力する事にした。いままでよりも労働時間を長くしてより密度の濃い勤務先を選ぶことにした。


そうする事で憧れの高級車と一流ブランドの衣服を身にまとう事ができるのだ。さらに最新のコンピューターを手に入れる事もできる。


貧乏臭い自転車通勤をやめ高性能な車を乗ることで、毎日の通勤時間は30分短縮できた。おかげで2キロ太ってしまった。

最新のコンピューターを使う事で、作業は30秒短縮できた。欲しいものが買える代償として一日の労働時間は5時間増えた。



彼は時間が足りなくなった。そこで時間の価値を認識し、外食に頼るようにした。おかげで毎日の食事の準備がいらなくなり1時間の時間の短縮ができた。そして3キロ太った。


合計5キロ太ったので、彼は一流の設備が整うスポーツジムに通う事にした。スポーツジムは大金と時間がかかったが、健康の為には仕方がないと思った。

そこで彼はお金が足りなくなった。そしてさらに労働時間を増やし、所得を増やした。度重なるストレスで健康が心配になってきた。そこで余ったお金で健康志向の強い食材を買うようになった。さらに彼は努力を決意した。


彼は客観的に見て、成功者になっていた。洗練された車に乗り、美しい衣装を身に纏っていた。週末になるとスポーツジムに行って汗を流す。誰もが彼を羨む。




彼は言う。

「お金が足りない。時間を買う為にはもっと稼がないと」










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